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れる語(ら抜き言葉)

「着物を着ること、何て言う?」
「着物を着る。」
「・・・。 ほな、着物を着ることができることは何て言う?」
「着物を着れる。」

確かに通じる。でも、それを言うなら「着られる」だ。〜ができる、英語ならcanを用いるところだが、日本語の場合「着ることができる」ことは「着られる」と言い、「着れる」とは言わない。

「着る」という動詞を活用させて、例えば、打ち消しなどを表す形にすると「着ない」となる。この「着る」を、できるかどうかの可能性を表す言葉にすると、助動詞の「られ」が付いて「着られる」となる。この時、付けるのは「れ」ではなく「られ」だ。打ち消しなどを表す場合には「着られない」となる。

こんなふうに、語形が変化してそれぞれの用法を受け持つことを「活用」といい、活用の形には、「ない」や「ぬ」に続いて打ち消しなどを表す「未然形」、「ます」に続く「連用形」、文の終止などに用いられる「終止形」、主に体言(概念を表す言葉の中で活用の無いもの)に続く「連体形」、「ば」に続いて仮定の意味を表す「仮定形」、命令の意味を表す「命令形」がある。

ところで、動詞って何だろう。助動詞って? 英語の授業で耳にしてた品詞や文法が国語にもあったとは・・・。生まれた時から日本語の中で育った私は、文法なんて外国語の中にだけ存在している特別なものだと思っていた。 動詞とは、事物の動作・存在・状態を表し、言い切る時の形が口語(言語の中で、音声で表現されるもの。話し言葉)では「書く」「着る」のようにウ段の音で終わる言葉のこと。そして、それに付属して叙述の意味を助け補う言葉が助動詞で、例えば「れる」「られる」。なお、動詞の活用の種類には「五段活用」「上一段活用」「下一段活用」「カ行変格活用」「サ行変格活用」があり、助動詞には「受身・尊敬・自発・可能」「使役」「丁寧」「希望」などの活用の種類がある。

「れる」「られる」は、助動詞の活用の種類の中で「受身・尊敬・自発・可能」を表す中にあり、それぞれは動詞に付いて活用される。例の「着る」を「受身・尊敬・自発・可能」を表して活用してみると、

  着・られ・ない
  着・られ・ます
  着・られる
  着・られる・とき
  着・られれ・ば
  着・られよ

となり、付くのは「られる」。ではなぜ「れる」ではないのか。「れる」も「られる」も同じ「受身・尊敬・自発・可能」を表す助動詞だが、その接続の仕方が異なっていて、「れる」は五段活用とサ行変格活用の動詞に付き、「られる」はその他の動詞に付く。「着る」という動詞は上一段活用で後者だから、可能性を表す場合も、尊敬を表す場合も、「着れる」ではなく「着られる」となる。

日頃、語句と語句とをつなげて難無く話している我々だが、そこには、ちゃんと文を作る時の法則「文法」が存在している。それによれば、動詞の活用の種類によって助動詞の活用語尾は変わってくるはずなのだが、今日では、受身や尊敬の場合には「られる」(例、先生が着物を「着られる」)で、自発や可能の場合には「れる」(例、私は着物を「着れる」)というように使い分けされてしまっているように思える。

温故知新である。時とともに変わりゆく言葉だが、古きをたずねた上で、新しい用法に適応していきたいものだ。