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ファーストフード店にて

「いらっしゃいませ、こんにちはぁ。」
「ご注文のほうはお決まりでしょうか。」
「ご注文のほうは以上でよろしかったでしょうか。」
「お会計のほうはご一緒でよろしかったでしょうか。」
「一万円からでよろしかったでしょうか。」
「一万円からお預かり致します。」

ある日のある新聞に「店員の『よろしかったでしょうか』」という記事が載っていた。それには、「これまでなら『よろしいでしょうか』と言っていたはずなのに、なぜ過去形で問われるのかと違和感を抱く客も多いようだ」とあった。私も、例にもれず、この言い方に違和感を抱く一人で、もう随分前からこの手の受け答えで接客してくるスタッフを鼻につくなぁと感じていた。かつては、こういった言葉使いは勿論のこと、お客さまに返す釣り銭の札の向きにまで気を配るようにと指導されていたものだが。

よそ見したまま、客の入ってくる音に反応して店員の口から「いらっしゃいませ、こんにちはぁ」と発せられた後、勘定を済ませるまで、その口からは「のほう」と「よろしかったでしょうか」が連発される。

注文そのものを聞きたい訳なのだから、何もわざわざ「ご注文のほうは」としなくても「ご注文は」お決まりでしょうか。と率直に聞けばいいのではないだろうか。その後の「よろしかったでしょうか」についても、たった今受けたばかりの注文を、それで間違いないかとうかを確認して言うのだから「よろしかったでしょうか」と過去形にするのではなく「よろしいでしょうか」と現在形で言うべきではないだろうか。会計の段の「ご一緒でよろしかったでしょうか」や「一万円からでよろしかったでしょうか」も然り。

確かに、違和感を抱くし新聞のコラムのように意義を唱えたくもなるが、この、現在のことを過去形で表現する言葉遣いは「確認形」と言われる言い方で、間違いではないのだ。「〜でよろしかったでしょうか」というのは「念のために聞きますが、〜でよろしかったでしょうか」ということで、「よろしいですか」と聞くよりも相手の立場でものを言っていることになる。これは、日本語にはない現在完了形の代用として用いられていて店側の控えめな姿勢を示す、という効果を持っている。その後に続く「一万円からお預かり致します」の「から」については、店員が客に小銭の有無を確認した後で、客が最終的に出した金額に対して言うのだから「一万円から」ではなく「一万円を」お預かり致しますと言うべきだろうけれど。

つまりはこういう事なのだろう。「一万円からお預かり致します。」というのは、「一万円からでよろしかったでしょうか、では一万円をお預かり致します」と言うところを中略してできた形であり、「のほう」については、「方」本来の意味から転じて生まれた婉曲表現をもつ用法で、「ご注文は」「お会計は」と言うよりも「ご注文のほうは」「お会計のほうは」と表現した方が、よりソフトに伝わる効果あるという事で、「よろしかったでしょうか」については先述したとおりである。

自分が何をやろうが勝手だし放っといてくれ、と言わんばかりの世の中でありながら、回りくどいようにも思える言い回しを使って、より柔らかく表現し、相手に接しようとする。稀薄な人間関係ゆえに、敏感になり過ぎてしまっているのか。痩せっぽちで軟弱なのは人々の体型や骨格だけではなさそうだ。